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島原から世界に向けて
「お互いさまですから」


























災害ボランティアの出現

 文字通り、災害に関係したボランティア活動を行うのが災害ボランティアであり、災害ボランティアは、災害という日常とは掛け離れた状況下で、居住地域以外でも活動を行うという点で、日常ボランティアと大きく異なる特徴をもつ。
災害ボランティアは阪神・淡路大震災によって全国の耳目を集めることとなったが、我が国における災害ボランティアの起源は、関東大震災時に活躍した旧帝国大学生の炊き出しボランティアに見ることができる。
 その後、伊勢湾台風や長崎大水害、伊豆大島噴火災害においても災害ボランティアの活躍はあったのだが、それまでの災害ボランティアに参加した人達は、主に被災地周辺の大学生や青年団、青年会議所会員等がほとんどで、一部の団体を除けば全国規模での参加者は見受けられなかった。
 それまでの日本では、災害は限られた地域内の問題であり自分と関係ない地域の災害にまで気を向ける人は非常に少なかったのである。自分の生活を第一にがんばってきた日本人にとってはごく当たり前のことであったこの考え方に変化が見られ、災害を一地域だけの問題とせず、同じ人間として自らの問題と受け止めた災害ボランティアが、全国規模で集まるようになったのは、1991年の普賢岳噴火災害からであった。
 普賢岳災害は、噴火の長期化による土石流と火砕流及び降灰といういくつかの災害が複合的に重なった、過去に例のない災害であった。このため、連日のように災害の情報が報道され、テレビが映らなくなった被災地以上に、他地域の人達の方が災害の情報を早くつかむという状況であった。
 この時から災害報道にも新しいスタイルが生まれ、遠く離れた地域でも災害が身近なこととして受け止められるようになったと言えよう。このことが、全国的な災害ボランティアの行動に結び付いたのだと考えられる。我が国における本格的な災害ボランティアは、まさにこの時に芽生えたのである。
 しかし、普賢岳災害に対する他地域からの災害ボランティアにとっては、右も左も分からない他人の地域でのボランティア活動であるため多くの問題点もあった。これをコーディネートしたのが地元の災害ボランティア団体の『島原ボランティア協議会(旧称:雲仙岳災害ボランティア協議会)であった。
 全国から参加したボランティアたちにとっても島原ボランティア協議会にとっても、長期災害に対処するボランティア活動は初めての体験であり、いろいろなことが手探り状態で実践された。そして、その中から災害ボランティアに必要なことや他のボランティア活動との違いなどが見いだされたのである。


・災害ボランティアの役割

・震災ボランティアにみる被災地救援活動(=被災地救援ボランティア)

  災害ボランティアの活動の中心は、被災地救援活動である。では、実際の災害ボランティアの活動とはどのようなものか、震災ボランティアを例に紹介する。
 阪神・淡路大震災では、災害発生からの3カ月間で延べ117万人のボランティアが被災地に駆けつけ、様々な救援活動に参加した。とくに、被災者に直接して行われた、被災者の個別のニーズに応える生活支援活動は、行政が基本的な救援活動を行う中で満たすことのできなかった部分をカバーした。
 被災地での救援活動は、時間経過とともに変化する。発災直後は、行政そのものも被災者であり、災害対策本部といえども生活救援活動を十分に整えることはできない。そのような時期は、災害ボランティアが行政の役割を補充したり代替えする場合もある。阪神・淡路大震災時の被災地では、とくに高齢者や障害者のような災害弱者といわれるひとたちの安否の確認や個別ニーズへの即応が有効であった。島原ボランティア協議会では、この時期のボランティアを『被災地救援ボランティア』と呼ぶ。
 その後、時間が経過するにつれ、交通の復旧、行政機能の復旧、災害救援対策の整備充実などが進み、被災者自身が自立し自活するようになる。その時期の災害ボランティア活動は、そのような被災者を側面から支援する活動にかわる。島原ボランティア協議会ではこれを『復興支援ボランティア』と呼ぶ。
 具体的には、仮設住宅への引っ越しの手伝いや仮設ふれあいセンターでの慰問活動などが実施された。


・被災地における災害ボランティア・コーディネーター

  阪神・淡路大震災では、被災者のニーズを受け止め、ボランティア活動者の持ち味を遺憾なく発揮させるためのボランティア・コーディネーターが重要な役割を果たした。ボランティア・コーディネーターは、災害ボランティア活動の経験者や地元での地域活動を通して地元に精通している人達が中心となり、ボランティア活動を行いたい人が求めるものと被災者のニーズを調整するだけでなく、行政とのタイアップによる救援活動も行われた。
 災害という特殊な状況下では、人間の心のバランスは非常に崩れやすい。とくに、たいした準備や心構えもなしに遠方から参加した新人ボランティアにはその傾向が顕著に現れる。このようなボランティア達には、ボランティアのボランティアが必要となる。その役割を果たすのも、災害ボランティア・コーディネーターである。


・後方支援ボランティア

 災害ボランティアの活動の中心が被災地での救援活動であることは先に述べたとおりだが、災害ボランティア活動は直接被災地へ出向いて行うものばかりではない。自らの居住地域で、救援物資を調達し仕訳したり(=これを島原方式と呼ぶ:詳しくは震災がつなぐ全国ネットワーク発行の冊子『物資が来たぞう』にある)、募金を募ったりする活動で災害ボランティアの役割を担うことができる。これが、後方支援ボランティアである。


・防災ボランティア 

 これまでの災害ボランティアは、災害が発生してから自然発生的に生まれて来たものがほとんどであったが、せっかくできたボランティア団体等を、災害が終わったからと解散することは非常に残念である。再び災害が起こったときに、また一から組織を組み上げることは、その分むだな労力を要し災害への即応のタイミングを逸しかねない。いつどこで災害が発生しても対応できる組織を維持することはとても大切なことである。
 では、災害時でない時には何をすべきであろうか。その活動内容はいろいろ考えられるが、災害でない平常時には、災害に強い地域づくりを目指し、防災意識の啓蒙や災害に備えた物資の確保などの活動を行うことも一例である。これが防災ボランティアと位置づけられるものである。
 以上に紹介したようなボランティア活動をすべて合わせて『災害ボランティア』と位置づけるものであり、災害ボランティアが地域に根差した活動で組織の輪を維持し、いつあるかもしれない災害に備えることがひいては広く全国を災害に強い国に育てる足掛かりになることは間違いない。


・災害ボランティア

 災害ボランティアとは、被災地で直接活動するボランティアのことを指すのだと思われがちだが、決してそればかり災害ボランティアではない。前述した防災ボランティアや後方支援ボランティアも災害ボランティアであり、災害ボランティアとはこれらの総称であると理解してほしい。
 その上で、日常のボランティア活動を考えたとき、全ての活動はいざ災害というとき直ちに災害ボランティアとして活動できるということが理解してもらえるはずである。
 災害ボランティアとは、決して特別な存在ではなく、私たちの日常の延長線上に存在するものなのである。
 
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