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島原から世界に向けて
「お互いさまですから」


























日常生活における災害への備え

 災害はいつ起こるか分からない。しかし、いつかはどこかで必ず起こるのが災害である。あなたの一生涯、あなたの周囲で災害が起こらなければそれに越したことはないが、しかし果たして「私に災害は関係ない」と言い切れるだろうか。
 もし、あなたがそう言い切る自信がない場合には、普段から災害に対する備えを怠ってはならない。
ここでは、災害に対する備えが必要だと考える人のために、地震災害を想定した日常生活についてを例示するが、災害に対する備えはおおむね大差ないものであるから、その他の災害に対する備えについては、自分自身で検討していただきたい。


(1) 地震はいつ起こっても不思議ではない
 日本が火山国であることはいうまでもないことだが、火山が多い原因は日本の下に太平洋プレートやフィリピン海プレートが沈み込むことにある。プレート運動は、地球そのも強力なエネルギーによるものであり、日本周辺に巨大な摩擦熱や圧縮力を及ぼす。
 このため、日本周辺には地震の巣といわれる活断層が無数に存在する。簡単に言えば、このことにより火山の噴火や地震が引き起こされる訳である。
 最近では大地震には周期があると考えられるようになり、過去の大地震が検証されるようになった。これによると、世界の大地震はおおむね80年前後の周期で発生すると考えられるようになったが、関東大震災からそろそろ80年を迎えようとしている今日、首都圏に地震が迫っていると考えてもおかしくはない。
 もし、首都圏で地震が発生したと考えるとゾッとするが、その被害の規模は想像もつかない。首都東京はこの80年間で大きく様変わりしており、関東大震災当時には存在しな かった無数の自動車や高層ビルが引き起こす災害は予測もつかない。
 しかし、だからといっていたずらに恐怖心を抱いたりする必要はない。あなたが現在住んで居る地域の条件がいかに悪くとも、地震災害に対する的確な知識があれば、冷静に事 態に対処して生き残ることは十分に可能である。そのために、知識と技術を身につけ備えを怠らない努力しなければならないのである。


(2) 大地震から生き残ろう
  @ 生き残りのカギは最初の1分間
 大地震から生き残るカギは、地震発生から1分間にある。この間を無事に過ごせば、あなたが生き抜く条件はあなたの判断にかかってくる。最初の1分間を無事に過ごせるかどうかは、地震に遭遇した場所によって大きく左右され、たぶんに偶然性に左右されるが、これとて普段から『今、地震に遭遇したらどうするか?』という心の準備ができていれば、無事に過ごす確立は格段に高くなるのである。
 地震には、グラグラっとゆれる遠距離型のものと下からドンと突き上げる直下型のものがある。どちらのタイプの地震であっても、生き残りのカギは最初の1分間にある。この1分間が地震そのものによる建物倒壊や橋梁落下等の直接被害を及ぼす時間帯であり、その後に発生が予測される火災等の災害は二次災害と考えてよい。
 すなわち、最初の1分間を安全に生き残らないと、二次災害からの脱出が不可能となる。よしんば命が助かったとしても、重症を負っていては火の海から逃げ出すことはで  きないのだ。
地震はまず最初に大きな揺れがくる。大地震であっても、この揺れはだいたい20秒ほどで収まるが、そこで油断してはいけない。大地震では、第2波、第3波をも警戒し、揺れが完全に収まるのをじっと待たねばならない。この間が大体1分間なのである。
 この間は、自分がおかれて居る場所等に合わせた安全策を講じ、なんとか無事にやり過ごさねばならない。本棚やロッカーなどの倒れやすいものがある場所、スーパーの商品棚のそば、落下物の危険がある屋外など自分がおかれた環境で身の守り方もかわってくるのである。
 ここでは、職場にいるとき地震にあったらという想定で、生き残り策を考えてみる。

  A会社に居るとき大地震に遭遇したら
 大都市では、会社に勤めるサラリーマンが非常に多く、職場であるビルの中で地震に遭遇する確立もおのずと高くなる。地震に対しては、ビルの中そのものが大変危険な場所となる。農作業中に畑で地震に合ったとしても、そこで命を落とすことは考えにくいが、都市生活者にとっては、まさに職場が危険地帯のである。
 では、ビルの中にある職場で最初の1分間を無事にやり過ごすためのサバイバル術を考察しよう。
 
 
(T)建物の構造や強度を知る
 まず、職場のある建物のことを知る必要がある。建物の分類としては大体次のような分け方をして、自分の職場の建物をチェックしておきたい。

 1.木造の建物
 戦前の建物は、筋交いや土壁などにより強度があるが、高度成長期の建築基準で建てられた建物は、まず地震に弱いと考えてよい。また、地震による火災の危険性も高い。

 2.鉄骨モルタルの建物
 外見はコンクリートビルのように見えるが、軽量鉄骨を骨組みとして建てられたもので、地震には弱い。

 3.建築後30年以上のビルディング(鉄筋コンクリート10階建未満)
 建物の老朽化による強度不足が考えられ、クラックや鉄筋の錆びなどに注意する必要がある。コンクリートがはがれ落ちたり鉄筋が剥き出しになり錆びているようであれば要注意。

 4.ガラス張りのショールーム(全面ガラス張りの自動車ショールームなど)
 壁が少なく、下からの突き上げ・横からの圧力ともに弱く、阪神・淡路大震災においても大きな被害を受けていた。あの地震が昼間に起こっていたら・・・

 5.建築後30年未満のビルディング
 おおむね安心できる建物であるが、人間が建てたものである以上、クラックなどを自分の目で確かめた方がよい。

 6.高層ビル
 建築方法等が一般のビルと違い、揺れの力を逃がす特殊な建築法により建てられているので地震に強い構造となっており完全に倒壊することは考えられない。しかし、内部の机やロッカー、書庫といったものの配置には注意を払う必要がある。


(U)会社としての地震対策はどうなっているか
 会社組織での防災対策は会社の規模などによりまちまちである。自分の職場の防災体制を普段からしっかりチェックして熟知しておきたい。そこで、最低限次の4項目はチェックしてほしい。

 1.消火器の数と配置位置
 消火器の期限は大丈夫か、消化器はすぐ取り出せるか(消化器の回りにダンボール箱などが積まれていないか)

 2.非常口
非常口はどこにあるのか、非常口を荷物でふさいでいないか

 3.燃えやすいものは整理されているか
職場には紙などの燃えやすいものが多い。これらが整理されていることが大切である

 4.倒れやすいものの転倒防止策
ロッカーや書庫などの倒れやすいものの転倒防止策や机などの横滑り防止策はとられているか

この4項目は常識的内容であるから、ほとんどの職場で対応している事と思うが、これに加えて緊急避難のためのロープや縄ばしごが常備されていることも必要である。


(V)個人の地震対策
 建物に関することなどは職場組織の対策であるが、自分の安全を守るための準備も欠かせない。避難するときのことを想定して、職場のロッカーか机の下に非常用の靴(ガラスやクギを踏んでも大丈夫なそこの厚いもの)、懐中電灯、ヘルメット、雨カッパ、非常食、動きやすい服(着替える余裕はないと思われるので、防寒用のベストなどでもよい)などを準備し、安全な場所まで避難出来る自信をもっておく。 


(W)地震が起こったら
 地震が発生したら、とにかく最初の1分間を無傷で無事にやり過ごすことだけに集中し、机の下にもぐりこんでじっとして(この間は他人のことにかまっている余裕はない)おく。
そして、揺れが収まったらまず落ち着きを取り戻すことにつとめ、次に自分の体のチェック(興奮した状態ではケガの痛みを感じないこともある)をし、周囲の状況の確認をする。建物は倒壊していないか、出火していないか、周囲の障害物は、ガラスが飛び散っていないかなどを確認し、そして脱出の方法を検討する。
 建物が倒壊していない場合は、倒れたものなどを乗り越えて非常口を目指すか、避難ばしごで窓から脱出するかということになるが、この場合は建物の周囲の状況に注意することと、職場の女性の脱出の手助けを忘れてはならない。
 建物が倒壊し、瓦礫に埋もれながらも運よく命が助かったという場合は、とにかく進める方向へ、また明るい方向へと目指し脱出する。


(X)連絡を取る
 外への脱出に成功したら、自分の安全を確保したのち、家族や恋人の安否の確認を行う。しかし、電話がつながらないことは十分想定されるので、直ちに直接連絡を取り合うことはまず不可能であろう。
 そこで、電話連絡がつかない場合のために、普段からもしものときに落ち合う場所を『自宅近くの集合避難所の大木の下』というように決めておくことが重要である。
 職場と自宅が遠い場合は、交通機関の壊滅などで1日歩いても帰り着かないということもあろうから、それぞれのおかれている環境に合わせて、最も安全と思われる場所で落ち合うように取り決めておく。


(Y)最初の3日間の意味
 家族や恋人と再会出来たら、次は落ち着いて救援を待つことになるが、救援にはまず災害弱者を優先させなければならない。そのため、自分たちは自力で生活出来る準備を整えておくように普段から心掛けておこう。
 まず、3日間の自活が出来るような準備をしておく。阪神・淡路大震災のときも、救援態勢が整うのに3日間かかった。3日あれば公的な救援態勢が整うということだが、被災者にとってのこの3日間は短いようでとても長い3日間である。この3日間の過ごし方次第では、精神バランスが崩れその後の避難生活が苦しいものとなる。
 最初の3日間を力強く生き抜くための準備はとても重要なのである。


(Z)最初の3日間のための準備
 自宅には最初の3日間を生き抜くために、防災用品を準備しておく。防災用品としてはキャンプに行くときの準備と同様のものをそろえておけばよいので、その内容については自分で考えていただきたい。これを防災用のセットとして大きなリュックなどにつめておく。また、最低限必要なものをつめた非常持ち出し袋も別に準備しておくとよい。これと一緒に、ヘルメット防災頭巾、靴、雨具、寝袋などを整えておき、いざというときはすぐに使えるように準備しておく。
 また、これらの準備品は年に一度はチェックをするようにする。その場合は、キャンプのつもりで非常食を食べて新しいものを補充したりするとよい。
 こうして、最初の3日間を乗り切れれば、復興に向けて力強い一歩を踏み出せる。


(3)防災への心構え 
 大地震に限らず、災害に遭遇すると、人間は混乱状態に陥り右往左往して普段とは違った行動をとるものである。こうした状態にならないために、普段からの心構えが重要なのである。心構えとして、緊急事態に臨機応変に対処するために、普段から災害対策のシュミレーションを行っておけば、いざというときには体が反応するものである。
  シュミレーションといっても、実際に体を使った訓練をしたりしなくても、頭の中でこ んな時はどうするかということを考え、何を優先させるかを決めておくことでもいざというときの対応は格段に違うものである。いろいろな災害ケースを想定して、自分のやるべき対策を考えておくことが、災害に対する心構えとなる。
 
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